重厚かつ耽美的な世界観を描ききった
Gary Numanのインタヴュー完全版!!

Gary Numanの通算20枚目の新作『SPLINTER (SONGS FROM
A BROKEN MIND)』が、とにかく素晴らしい。ヘヴィかつダーク、
それでいて美しい、インダストリアルやゴシックと呼ばれる作品
群のなかでも、頭ひとつ抜け出た作品になっている。Gary Numan
というベテラン・アーティストのキャリアや作品数におののかず、
今年絶対にチェックすべきアルバムのひとつだ。これは作品発
売と同時に各CDショップにて配布されている「GrindHouse
magazine別冊 Gary Numan Special Issue」に掲載したイン
タヴューの完全版だ。彼の発言を余すことなく、ここにお届けする。

――あなたは1978年にまずTUBEWAY ARMY名義でデビューを飾り、その後
1979年に『THE PLEASURE PRINCIPLE』でソロデビューをしていますね。
もともと音楽を志してから、TUBEWAY ARMYとしてデビューするまでの経緯、
そしてソロに至る経緯を、簡単に教えてください。
「実はTUBEWAY ARMYはパンクロック・バンドで、僕はシンガー/ギタリスト
だったんだ。友人のポール・ガーディナーがベースをプレイして、ドラムはいろ
んな人が入れ替わりで叩いていた。Beggars Banquet Recordsとの契約を
得て、2枚のシングルをリリースしてから、アルバム制作のためにスタジオに
入った。そのときにシンセサイザーを初めて見てね。わからないなりに触って、
いろいろ試しているうちに気に入ってさ。ついにはエレクトロニクスなアルバム
を作ったんだ。それをレーベルに持っていったら、パンクな作品を期待していた
スタッフは不満そうだったよ。でも僕は“もうパンクは終わった。これからはエレ
クトロニクスの時代だ。このアルバムはその先駆けになる!”と反発した。加えて、
僕はそのアルバムをソロ名義でリリースしたかったんだ。でも周囲から説得さ
れて、結局TUBEWAY ARMY名義でリリースした。そうして『TUBEWAY ARMY』
(’78年)でデビューして、その次の『REPLICAS』(’79年)からはヒットシングル
も出て、僕は急にポップスターになった。そうして、やっとソロとしてのキャリア
を歩むことができるようになったんだ。まぁ、それ以前から作曲、プロデュース、
デザインとすべてをやっていたから、何かが変わったわけではなかったけどね」

――Gary Numanといえばシンセポップ、ニューウェイヴ、ポスト・パンクといった
ジャンルの開拓者として、音楽ファンに紹介されることが今なお多いです。そのこ
とを、あなたはどう感じていますか?
「僕としては、よくわかっていないんだよね(笑)。僕がこの音楽を始めた時、他人
がどう感じるかなんて考えたこともなかった。ただ、通常のバンドの編成にエレク
トロニクスを加えるのが、楽しかったんだ。パンク・バンドがギターで弾くフレーズ
のところを、シンセサイザーに置き換えたりとか、そういうシンプルでアマチュアっ
ぽいやり方がね。レコード会社にしてみると、僕は言うことを聞かないアーティスト
だったみたいだけど(笑)」

――新作は、通算で20枚目になります。その精力的な活動には驚かされま
すが、何がそんなにあなたをかきたてるんでしょうか?
「音楽が好きだからだよ。音楽への愛や情熱が、僕を後押ししてくれるんだ。
ほかにも、日々の生活で直面したことを曲にすることで解決に向かっていくと
いう、セラピーみたいな側面もある。自分が作曲していない姿なんて想像つ
かないよ」

――また作品を順に聴いていくと、少しずつではあるものの、あきらかに作風
が変化していっていることがわかります。90年代以降、あなたからの影響を
公言するバンド/アーティストが多数出現しましたよね。でも、あなた自身も
それらのアーティストたちに刺激を受けているようにも感じられます。
「その通りだよ! クリエイティヴな人間なら、常に何かを学ぼうとするのは当たり
前のこと。どんな成功を手にしても、すべてを知ったような気になってしまうのは、
怠慢だよ。僕は常にいろいろな音楽を聴いて、テクノロジーの使い方や曲の構築
方法なんかに注目してきた。この世界には、賢くて才能豊かな人たちがたくさん
いる。僕から何かを学んだ人という人たちから、僕は同じように学ばせてもらって
いるんだ。NINE INCH NAILSのトレント・レズナーは、僕のことを評価して、曲
をカヴァーしてくれた。本当に光栄だよ。同時に、僕は彼の音楽に感銘を受けて
いる。音楽だけじゃなくて、映画や本、服…本当に様々なものから学んでいる。
そうして自分のなかに取り入れたものが引き金となって、イマジネーションに火
がつくんだ。賢い人は、自分が影響を受けたものを、まったく違うものへと変換
させてしまう。僕もそうして、取り入れたアイディアから、新しいものを作りたい
と思っているんだ」

 

――新作は、ここ最近のダークな作風をさらに推し進めた印象です。ギター
も随所で使ってはいますが、基本的にはシンセサイザーやドラムマシンなど
エレクトロニクスで、音響面でも雰囲気面でもヘヴィさを強調しているように
思います。同時に、ゴシック的で荘厳な感触です。あなた自身は、どんな作
品を作ろうとしたのでしょうか?
「ヘヴィなものにしたいと思っていたけど、同時にダイナミックで、変化に富んだ
ものにしたかった。ビッグなコーラスの曲もあるし、幅広い曲を集めたものにし
たかったんだ。特にエレクトロニクス・ミュージックをやる楽しさは、聴いたことの
ないサウンドをいくつも作ることが可能なことにある。新しいサウンドを作るため
に何時間も作業をし、それを曲の中で使うかを考える。新しいサウンドを生み出
すことを僕は愛している。ほかのどんなジャンルを見ても、ここまでたくさんの新
しい音を詰め込んだものはないと思う。新しいサウンドは、自分をどこに連れて
いってくれるのか…それは実験的なプロセスで、曲をどんな形になるのか分か
らないんだ。サウンドに導かれて、暗闇の中を歩くようなものだよ。進めていくう
ちに、最初に考えていたものから離れて、どんどん進化していくものなんだ」

――曲のタイトルや歌詞を見ると、少し自虐的と言うか、ネガティヴなことを
歌っているように見えます。
「7年前にアルバムを制作して以降、僕と妻の間には3人の子供が生まれた。
それによって、自分中心に楽しんでいた生活が、大きく変化したんだ。子供に
よってすべてが変わった。僕も妻も、親になることに適応できなくて、すごく悩
んだよ。口論が絶えず、不幸な結婚生活を過ごしていた。それからまた曲を書
き始めたときに、そのことを題材にしたんだ。曲を書くことで自分の状況を深く
理解し、僕と妻の間の問題を解決する糸口がみつかったよ。結果的に僕たちの
絆は深まったし、アーティストとしてのキャリアも続けることができた。新作のサ
ブタイトルの“SONGS FROM A BROKEN MIND”は、その時期を示している。
仕事、親としての自分、夫としての自分のバランスが取れなかったんだ。本当
に辛くて、壊れそうだったよ。新作がダークなのは、そういったことがあったか
らなんだ。もちろん、子どもはいつだって可愛いものだけどね」

――重厚かつ無機質なサウンドが立ちはだかるなか、“Lost”や“My Last Day”
のように情感豊かな曲もありますね。こうした「機械的」であることと「人間的」
であることの両立は、かなり意識したことではないでしょうか?
「むしろ僕にとっては自然なことで、何かを意図したわけではないんだ。たくさん
のテクノロジーやプログラミングを駆使しながらも、ヴォーカルやギター、ベース
といった人間的なパフォーマンスもフィーチャーしている。テクノロジーをベース
とした音楽でありながらも、人間のパフォーマンスをそ乗せることを目指してきた。
僕にとってはそれが音楽を興味深いものにさせる手段であり、テクノロジーとギ
ターやベースといったオーガニックなものを組み合わせることで、ベストなパフォー
マンスへと繋がっていくんだ」

――今注目しているアーティストや、共演したいと思っているアーティストはい
ますか?
「最近、BATTLESと“My Machines”で、OFFICERSと“Petals”でコラボしたよ。
そのほかには、トレント・レズナーといっしょに作業したいんだ。彼が忙しいか
らなかなか難しそうだけど、実現したらきっといい感じになると思う。でもいざ
コラボレーションとなると、僕はけっこう受身でね。声をかけてもらえばやる
けど、注意深くするようにしている。自分が関わることで何ができるのか、を慎
重に考えたいんだ。音楽的な価値を生み出せるかが重要なんだよ。決して怠
けているわけじゃない(笑)」

――キャリアの長いアーティストのなかには、時代に取り残されてしまった人も
います。でもあなたは、その時代の空気を反映させ、率先して新しいことに挑戦
していますね。それでいて、自分のアイデンティティを崩さずにいると思いますが、
やはり難しいことなのではないでしょうか?
「そんなことはないよ。多くのアーティストは、ひとつの成功したスタイルを見つ
けると、それをやり続ければ安泰だと思って、新しい領域に踏み込んだり、挑
戦することをやめてしまう。僕にはそれが理解できないんだ。やったことのない
ものに挑戦するのは、僕にとっては当たり前のこと。僕は今でも新しいテクノロ
ジーに注目しているし、新しいバンドを観に行くようにしている。今でも音楽が好
きなんだ。昔を振り返ったりなんてしない。今だって、昔と同じくらい素晴らしい
音楽は存在しているんだから。僕もその一部になりたいんだ。過去の失敗や栄
光に興味はなくて、次はどんな曲が出てくるのかに興味がある。どうしてみんな
そう考えないのか、僕には理解できないよ。キャリアが長い人ほどそうしている
ことを、悲しくも思えてしまう。息の長い人ほどノスタルジックになっている。僕は
今回のアルバムを作るのに、7年かかった。これって、僕としてはかなり恥ずか
しいことなんだ。音楽を作るのが好きだから、もっとアルバムを作りたい。個人的
な問題が解決した今だからこそ、次のアルバムを早く作りたい気持ちが強いね。
2014年のうちには次のアルバムを出したいし、そのために自らをプッシュするつ
もり。たくさんのアイディアがあるし、スタジオにも入りたい。これからツアーに出
るし、映画のサウンドトラックをやって、またツアーをする予定なんだ。だから来年
はツアーの合間にスタジオに入って次のアルバムを作り、できるだけ早く出すつ
もりだよ。次も新しいサウンドのアルバムを作りたいという気持ちで、毎朝起きて
いるくらいなんだ」

――最後に、昔からのファン、そして新作で新しくファンになってくれるであろう人
たち、それぞれに一言ずつメッセージをいただけますか?
「昔からのファンには、今までの忠実な姿勢や、長らくファンでいてくれたことにお
礼を言いたい。今までの僕のアルバムには、よくないものがあったことは認めるよ。
でもここのところのアルバムには自信があるんだ。新作も素晴らしいものにできた
から、それで埋め合わせしてもらえたらと願う。
そして新しいファンには、ようこそと言わせてほしい。僕みたいに長くやっている人
にとって、新しいファンに聴いてもらえることは、素晴らしいよ。古いファンたちにサ
ポートしてもらえるのと同様にね。人は年月とともに、家のことや仕事のといった
日常生活のプレッシャーによって、音楽から離れてしまう。これは音楽が嫌いに
なったのではなく、自然とそうなってしまうものなんだ。だから新陳代謝が必要な
んだ。新しい人たちがライヴに来てくれるのは、異なる世代によるリレーが繋がっ
ているようなもの。すごく大切なことだし、これが起こっていることを、僕はとても
光栄に思っているよ」


文・望月裕介/text by Yusuke Mochizuki



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 Gary Numan
 『SPLINTER (SONGS FROM A BROKEN MIND)』
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