THE STARBEMSが4枚目の新作を発売!

自分はかつてから日高央をある種の"才人"だと思ってきた。BEAT CRUSADERSの大成功を経て、それとはすべてが異なるTHE STARBEMSを結成し、さまざまな動きをしつつ今日まったく独自のポジションへと到達した。新作『STAY PUNK FOREVER』発売を機に久しぶりに話を聞いた。



――通算4枚目の新作が発売されました。今の心境は?
「そうですね…音楽に直接関係はないかもしれませんけど、CDがなくなりそうじゃないですか。そういうご時世にパッケージ(=CD)を売るって大変だなって思うんですね。素直な想いです。まずCDショップがどんどん減ってる。オレたちはソフトを作る人間ゆえハード方面、ハード関係はなにも決めらんない。だからバンドマンやアーティストの立場が急に揺らいでる時期にあるというか……で、俯瞰して見ちゃったり、そうせざるを得ないというか。今までなら自分に集中して考えたり、発言できたんですけど、人ごとじゃない状況にあるというか。近々BRAHMANも新作を発売しますけど、みんな信じて作ってきたフォーマットがなくなりつつあるから、どこを目指して作ればいいのか混迷の時代だなってスゴく思いますよ」

――2枚目『Vanishing City』(2014年)発売からしばらくして当時の書き下ろしの新曲を2曲"FIGHTING FATE""JINGLE JINGLE SONG"を無料公開したじゃないですか。無料公開する、というところにいくまでにバンド内じゃ公開すべき、いやすべきじゃないと喧々囂々あったと言ってましたよね。実際やってみてどうでした?
「あの頃はまだ、プロモーションのオマケみたいな感じでしたね。当時、リスナーがまだインターネットに慣れてない時期だったから、数字的には大したことなかった。やったことに後悔はないし、本人たちも満足感はありましたけど、リスナー的にはそこまでまだリンクできてなかったというか…」

――やった側としては満足したけど、その満足感がリスナー側にはダイレクトに伝わらなかったと?
「そうじゃないかなってスゴい思いましたね、当時は」


――メンバーチェンジを2度経験しつつも頻繁にツアーに出、単発ライヴもやり、コンスタントに音源も出してきたというプロセスにおいて、CD市場が縮小していくという真逆の状況が起きてるわけですけど、ここ数年間はバンドにとって、また日高さん個人にとってどんな時期だったと捉えてます?
「アナログレコードやカセットテープがブームで時折ニュースにもなりますけど、それは嗜好品のレベルの話なんですよね。おそらくCDも遅かれ早かれそうなっちゃうんじゃないかなって気がしてて。だから危機感を回避するために先行配信とか無料ダウンロードとかやりましたけど、危機感は減らないですね。それはバンドが危ういとか調子が悪いとかじゃなく、リスニング環境が整ってくれないというジレンマがスゴいありました。ツアーに出て、無料配信した曲をライヴ会場じゃCDで買えますよにしたら、CDでほしいっていうお客さんの方が圧倒的に多くて、無料で聴いたらよくて買いにきましたっていう人もいたんですけど数としては少なかったんで……そこに落とし込むのにはバンド側も悩むし、リスナー側の若いキッズもどういう手段で音楽を聴いていいかわかんないんだなって。若い子はお金がないからアプリもダウンロードできないし、そりゃYouTubeがひとり勝ちするわなって。誰も得してない。宣伝したい企業とYouTubeだけが得してる感じ。ピコ太郎に仕事を介して会ったことがあるんですけど、みんなにYouTubeスゴかったでしょ?って言われたけど、それからの収入は大したことないですよって言ってて(笑)。あれだけYoutubeでヒット飛ばした人がそう言ってるっていうことは、みんな相当どこでハードを選べばいいか悩んでるんだろうなっていう危機感だけが募っちゃう。それとバンドのコンディション。あまり関係ないかもしれないけど、やってる本人たちも毎日のようにそういったことを話してて。特に西(越川和磨/g)くんもCDを作ったはええけどどこで売ってくれんねん!みたいな関西人ぽい悩みを吐露してましたから(笑)」

――新作のジャケいいですね。アナログレコード特需が引き金になってるんでしょう、最近CDショップにミュージックカセットテープを並べたセクションが目立ち始めました。"STAY PUNK"っていう言葉も昔っぽくて好きです(笑)。
「半分イヤミなんですけど」

――半分イヤミって!?(笑)
「こういうタイトルやジャケットってある意味問題提起でもあるし、イヤミでもありますよね。どんどん音楽が嗜好化していくけどそれでいいのか?っていう。あえてベタなタイトルにしたのも。絶対、アナログレコードにモヒカン頭を想像するでしょうけど、それだけでパンクロック、はたしてそれでいいのか?っていう問いかけでもあるんです」

――我々はアナログレコード、及びCD世代です(笑)。THE STARBEMSのライヴには若い世代のリスナーもたくさん足を運んでるじゃないですか。ただ、我々と彼らの世代は明らかに音の探し方、聴き方が違う。日高さんが思う、そういう若いジェネレーションをどう見てます?
「極論なんですけど、アニソンなるものが世代を分断しちゃったって思ってるんです。10年ぐらい前のある日、渋谷のTSUTAYA O-EASTでだったかな?全然知らない名前の人がライヴカレンダーにあって、ソールドアウトって書かれてたんですね。名前をあまり知られてない人がライヴをソールドアウトにするのって声優さんくらいでした。それくらいの頃から脅威を感じてて。知り合いが声優のマネージャーをやってたんで何回かライヴも拝見させていただきました。だけど、ライヴ現場が音楽を聴く環境、行為じゃないんです。ファンの方には申し訳ないけど。ジャニーズやアイドルの図式がただただ声優の方に移っただけなんです。新たなアイドルのメディアができちゃったみたいな。それでライヴハウスとかCDとか音楽の売り場のシェアをそっちに取られちゃって、実際TVもそうじゃないですか。音楽番組よりアニメ番組の方が全然多い。下手すれば、Mステで歌ってるバンドよりも声優さんの方が有名だったり、数字もよかったりする。その影響を受けてる10代、20代が今主流になりつつあると思うんですよね。ビークル(=BEAT CRUSADERS)んときはバンドでアニメ番組の主題歌をやるっていう文化があり、オレたちはそれにウマいことハマり、シェアも認知度も上がったんですけどね。それが今ひと段落し1周して落ち着き、バンドじゃなく声優さんの時代になり、バンドのキャラクターとか声とかが聴こえなくなっちゃってきてるのかなって思ってます。オレの予想じゃ、それが主流になれば"イヤだ! ダウンロードなんかしない!"的な若い子が出てきてそれをひっくり返そうっていう動きが起きるハズなんで、そこに期待したいですね」

――新作の前に、昨年6月に『NEW WAVE』っていうミニアルバムを出してますね。またずいぶん直球なタイトルですけど、この作品はTHE STARBEMS的にはどういう意味合いがあるんです?
「BEAT CRUSADERS…前にやってたビークル時代のイメージを払拭しようっていうのが1枚目『SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD』(2013年)、2枚目『Vanishing City』での作業だったんですね。続く無料配信や3枚目『Feast The Beast』(2016年)くらいの頃から"元ビークルの人ですよね?"っていうよりかは"THE STARBEMSの日高さんですよね?"って言われることが多くなって。で、そろそろ自由にやっていいんじゃないかって思って。『Feast The Beast』からは他のメンバーのイニシアチヴも入れるようにしました。それが多少ビークルっぽく聴こえちゃってもいいというか。そうしたら逆に"ビークルみたいな音やってるんですか?"とも言われなくなったんで。つまりTHE STRABEMSなりの新しい音の解釈っていうのが、『NEW WAVE』だったんです。あと一時期、ニューウェーブの影響を受けた若いバンドたちが増えたじゃないですか。だけど全員ただ四つ打ちなだけで……NEW WAVEってそういうことじゃないというイヤミでもあって(笑)」

――イヤミばっかですけど(笑)。
日高「基本イヤミです(笑)。だって、絶対GANG OF FOURを聴いてねぇだろみたいなバンドばっかじゃないですか、若手ニューウェーブバンドなんて。いわゆるダンスロックバンド全体にもそう感じます」

――2枚目までの音楽性はビークル時代のイメージを払拭することを意図してた、とさっきおっしゃってたじゃないですか。確かに音楽性も曲調も徹底的に攻めてました。ビークル時代はお茶の間にまで進出したアーティストですから、THE STARBEMSの初期の頃はそれとは180度違う音楽性を追求してたことになります。スピード感強いし、音ブ厚いし、ギター3人いたしで(現在は越川と菊池篤の2人)。新作の作風はその頃と比較すると、よりキャッチーになり、曲調のバリエーションもさらに豊かになったっていう印象を得てます。やはりビークル時代のイメージはもう払拭できた、ということがその根底にあるそういう作風に?
「そうです、完全に。3枚目のタイトルには獣の宴みたいなイメージがあるんですけど、メンバーそれぞれのキャラが強くなったんですよね、いい意味で。それこそ潤さん(=山下潤一郎/b ※元ASPARAGUSほか)はリハーサルすっ飛ばしてこないとか。オレと 篤(=菊池篤/g)は妻子持ちなんでリハいきませんとか(笑)」

――なんか…生活感出てますね(笑)
「そうですね、丸出しです(笑)。各メンバーの自由が許されるようになってきたというか。まるで獣みたいな連中ですよ(笑)。今現在の音楽をやる人たち、なかでも10代、20代って品行方正で、正直、真面目すぎじゃないですか。ライヴ後に打ち上げもしないし…そういうことへのイヤミです(笑)」

――またイヤミかいな(笑)。
「そうですね(笑)」





――3枚目の発売タイミングで初めて取材させていただきましたけど、そのときは正直、日高さん主導・先導でTHE STARBEMSをやり、音楽的にも日高さんが先頭に立って旗振り役をやってる、という印象が強かったんですね。だけどここまでお話を伺ってると、バンド内に、またメンバー間にずいぶんフリーダムが生まれたように思います。そして、それが音楽性にも明確に出てるように思います。
「そうですね、だいぶフリーダムですよ。そして、だいぶビーストですよ(笑)」

――ほかのメンバーからも曲のアイディアが出てきてるそうですけど、かつてなかったようなタイプの曲調が幅を効かせてますよね。遊んでるところも見受けられますし(笑)。
日高「けっこう遊んでるというか、ルーズなところはルーズにしてますね」

――つまり自然体で作った作品だと?
「うちレコーディングの仕方って特殊で西くんがレコーディングエンジニアもやってくれるんで、歌入れの後にギターパートを入れるんですね。これってなかなか普通のバンドじゃあり得ないことですよ」

――そういうレコーディングの仕方があるって初めて聞きました(笑)。
「ベーシックトラックは篤が弾くんで、コードとかは入ってるんですけど、リードは入っていない状態でオレは歌を入れる。それに対して西くんがジョニー・マー(元THE SMITH)みたいにしましたとか言う。彼はTHE SMITHやTHE CUREをリアルタイムで通ってないのにね。ちょっとミック・ロンソン(デヴィッド・ボウイほか)っぽくしましたとか、そういうことをしてくれるんですよ。そこはうちの強みというか。特に"Go to Hell, Instead of Us"はギターが輪唱になってる。これも歌入れして、ギター入れ終わってからデータで送られてきて、ギターが輪唱になっててみんなビックリみたいな」

――たとえば"Funky Control"や"Go-Go Sensation"とか、明らかにニューウェーブからのテイストが強い曲もある。もちろん、攻めるTHE STARBEMSもあったりで、前よりいろんな方向にベクトルを向けてますよね?
「さっきも言った、メンバーの自由が効くようになったというのもありますし、面白いのがメンバーの世代が違うから解釈がみなそれぞれで。"Go-Go Sensation"はオレ自身はもうちょっとジョン・フォックス時代のULTRAVOXぽくなるかなと思ってデモを持っていったら、西くんは町田康さんのINUっぽいって。それに対し潤さんはもっとパンクロックぽくとか言う。2枚目ぐらいまでは、オレのイメージはこうだからそれに寄せてくれって言ってたんですけど、みんなの思う通りにやってくださいって丸投げしたんです。アレンジに関しては」

――新作を完成させるまでになにに一番気を配りました?
「現在マネージャーが不在なんでメンバー自ら車の運転をしなければいけないとか、そういうこともやりつつのレコーディング作業でしたから、バランスに気を配りましたね。一人一人の物理的な量が増えてたらとっくに破城してたと思いますけど、今回はメンバーみんなで役割分担してバランスがとれたことで気持ち的にはスゴい楽でした。チャリで10分くらいかけて車をとりにいくとかやりましたもん、レコーディング中に(笑)」

――新作でリスナーとどういうところを共有したいですか?
「ま、基本オレは曲から作っていくタイプですし、日本語じゃないっていう意味じゃ歌詞を強く押し出したい願望ってそんなにないんですね。だいたい日本のバンドマンって歌詞を大切にとか、メロディを大切とか言うじゃないですか。だけど、そもそもそんなの当たり前のことですから、そこを打ち出す気はなくて。かつ2枚目と4枚目じゃ全然音像が違う。だからそのタイミングでこれが鳴ってたと考えながら聴くと実は楽しいというか。だけど、なかなかそういうふうな聴き方ってされない。それだとその時代にその作品が出た意味がないというか、あとで聴いても面白くないというか。そういうアーティストにはなりたくないって強く思いますね。THE BEATLESとかMETALLICAとかもそうですけど、その時代で音楽性は違うけど、バンドとして一貫性があったり、ストーリーもあったりで。そういうところが楽しめるのがバンドのいいところだと思うんですね。そういったことを新作から少しでも感じとってもらえたら嬉しいですね」





文・有島博志
協力・島村優駿