国産地下音楽の猛者たちが集った、年の瀬の一夜!!

DOOM presents
It's Real… An Impossibility Vol.001
December 18th, 2016 at Shibuya Cyclone, Tokyo

度重なるメンバーチェンジを乗り越え、10月に新作『The Cecond Lp』をリリースしたT.C.L。2014年に再指導して以来、初期音源の再発に新作『SILL CAN’T THE DEAD』、そしてベスト盤発売と走り続けてきたDOOM。そのDOOMの藤田タカシ(vo,g)が、まだT.C.Lを結成するよりも昔、KYONO(vo)が在籍したTHE MAD CAPSULE MARKETSでサポートギタリストを務めた過去を持つ等、両者は長く、そして深い繋がりを持っていた。にも関わらず、ずっと対バンの機会がないまま月日を重ねてきたが、2016年も押し迫った12月、ついに激突。「It's Real… An Impossibility Vol.001」と題したDOOM主催の企画にて実現した。この二組に、MUROCHIN(ds/WRENCH、WAGDUG FUTURISTIC UNITYほか)やKAORI(b,vo/元YELLOW MACHINEGUNS)、IxSxO(g,vo/元ABNORMALS)らによるSUZISUZIを加えた3マンで、日本の地下ハードコア/パンク/メタル・シーンの歴史を濃縮した夜が繰り広げられた。

SUZISUZI

トップバッターはSUZISUZI。80~90年代のハードコア・パンクやファストコア、ほかにもロックンロールの要素をにじませつつ、タンバリンを持ったパティ・スミスのような出で立ちのK♠(vo)も目を引く。MUROCHINの激速ビートに載って4人全員がヴォーカル、もしくはコーラスを取る熾烈なサウンドながら、MCはユルユルというか脱力というか…なんとも和やか(笑)。メンバーが自然体で楽しんでいるのが伝わってきて、なんだかこっちまで笑顔になってくるのだ。MOTORHEADの“Iron Fist”のカヴァーのほか、新曲も披露し、今年最後というライヴを終えた。昨春にリリースしたアルバム『Scream Addict』も含めて、改めてチェックしたい。

T.C.L

続くはT.C.L。個人的に彼らを見るのは10月に新作『The Cecond Lp』をリリースしてから初めて、かつ久しぶりだった。度重なるメンバーチェンジを乗り越え、辣腕ベーシストIll Des Pinsとともに作り上げた新作で取り入れた変拍子やキャッチーな歌メロが、バンドにどのように作用するのか…と期待していたが、まさに彼らの新たな段階を目の当たりにした。1st『Tremendous CLassixx』の頃は一気に駆け抜けるかのようだったのが、今はトリッキーな要素を巧みに落とし込むことで、一発一発の攻撃力を強調。むしろバネの強いグルーヴやリズム等、新たに習得した技があちこちから飛び出して翻弄されるかのよう。ドスの効いた声で威圧するYAMADAと、アジテーションからハーシュ・クリーンまで自在に操るKYONOの対比も、より生き生きとしているように思えた。1stからの曲はラストの“DIS THE POWER”のみに絞ったのも潔い。メンバーチェンジをネガティヴなことではなく、バンドに必要な新陳代謝とすることでネクスト・ステップに到達したT.C.L。これからが楽しみだ。

DOOM

そして最後のDOOMは、とにかく混沌としているというか、こちらの予想を裏切り続けるライヴだった。もちろんウネウネと這いずり回る古平のフレットレス・ベースや、藤田のブルージーな塩辛ヴォーカル、奇妙なコードをかき鳴らすギターは健在。なのだけど、PAZZのドラムが、即興を交えたフリーキーなプレイで暴れまわる。それに対抗しているのか、藤田や古平のプレイも原曲とは違って聞こえる。そういえばVol.98に掲載したインタヴューで、藤田は「PAZZは同じ曲をやるでも、毎回違うんだよね。読めないし、落ち着いて歌っていられない(笑)。PAZZはインプロヴィゼーションの要素がすごくある」と語っていた。なるほどこういうことか…と腑に落ちた感じだ。とはいえ、楽曲が破綻しているということでは断じてない。むしろ卓越した技術を持つ三人が火花を散らすかのような、藤田の言うところの「フリーロック」なステージには、呆気に取られっぱなしだった。サイバー/インダストリアルな要素を見せる“KILLING FIELD”のジワジワと侵食するかのような狂気も倍増しだし、牧歌的な導入のインスト“SIESTA…”から。耳に引っかかるようなリフが特徴的な“STILL CAN’T THE DEAD”へと自然に流れ込んでいく様は、まさに職人芸といったところ。やはり一筋縄ではいかないバンドである。アンコールでは“DEATH TO WIMP”をはじめ、ごく初期からのレパートリーを4曲披露。こちらはより原曲を尊重したプレイだったが、だからこそバンドが込めた初期衝動やハードコアな激烈さが前面に出る結果に。大ラス、ベースのタッピングが脳みそをかき回すかのような“WHY!?”で見せた藤田の鋭い眼光にはゾクリとした。
アンコールも終え、ステージを去る際に「ありがとう、またね」とポツリと言う以外、MCは一切なし。あくまで音で語るそのスタンスにも、改めて惚れ惚れしてしまったのだった。

この日、初めてステージで渡り合ったDOOMとT.C.L。2017年1月から2月にかけて行われるT.C.Lのレコ発ツアー東名阪、それに神戸にDOOMが出演する形で、再び会いまみえることになっている。DOOMはほかにも長らく入手困難だったアルバム『Illegal soul』の再発も春に控えた状態だ。この次は何をやらかすつもりなのか。藤田は「(自分たちの言っていることを)若い子たちにジジイの戯言だと思われないようにしなきゃならないからね」などと自虐交じりに言っていたが、とんでもない。こんな狂気に満ちたバンドに、日和ってもらっては困るのだ。


text by Yusuke Mochizuki
photography by miki matsushima(DOOM & T.C.L)、kenji nishida(SUZISUZI)


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