ジャンルレスの4組が共演した、
GrindHouse主催による初のライヴ・イベントをリポート!

pre-GrindHouse jamboree Vol.0
April 6th, 2013 at Shibuya club asia, Tokyo


GrindHouse主催による初のライヴ・イベント、“pre-GrindHouse jamboree vol.0”が、
4月6日に開催された。主宰者の有島氏いわく「ゆくゆくは出演者云々ではなく、このイ
ベントだからこそ行こうと思われるものにしたい。(10-FEET主催の)京都大作戦を狙っ
てる(笑)」。あえて“pre”“vol.0”と銘打ち、「ジャンルの壁を崩して、それぞれのフィールド
で突き抜けたバンドをセレクトした」というこの日。外は激しい雨風となったが、いやいや、
渋谷club asia自体が凄いことになっていた。

そんなイベントは、CONCEPTION COMPLEXからスタート。「(このイベントに)もうひと
バンドに出てほしい…ということになった際、すぐに彼らの名前を候補に出した。いろいろ
な意味で縁があると思ったし、ぶっちゃけると直感だった」。3月29日に本ウェブサイトに
アップされた、彼らのライヴリポートの中でGrindHouseの望月氏はそう書いているが、
実際、その直感は正しかったと思う。ステージング自体はまだ荒削りだが、そのサウンドに
はアグレッシヴなエモーションとキャッチーさやメランコリックさが交錯。変幻自在なダイナ
ミズムからは飽くなき野望が息づくとともに、観客とひとつになってひとつひとつの瞬間を
楽しもうといった姿勢が。そんな中、Mizukiはフロントマンとして狂おしく感情を発露し、時に
アジテイターを彷彿。特にステージとフロアを分ける柵の上で拳を突き上げ、両手を広げる
姿は、理想に燃える革命家を思わせた。
「もっと暴れようか!」。Mizukiが“Promised Day”で腕を回すと、それに呼応するようにオーディ
エンスがモッシュ・サークルに参加。場内の空気がレッド・ゾーンに向かって一気にうねり出した。
ザクザクと攻撃的な激烈さにモッシュが加速。ステージ前には何かに取り憑かれたかのように
ヘッドバンギングする女子の姿も。この瞬間、当日の“流れ”が完全に決まったと言える。緻密さ
と躍動感が協調とせめぎ合いを繰り返した全6曲。バンドのポテンシャルを存分に見せつけた
約30分だった。

続いてはKAGERO。インストによるジャズ・パンク・カルテットとして2005年より都内を中心に活
動し、海外でも注目を集める存在だ。全員が黒で極めるなどアウトローでハードボイルドな雰囲
気があり、何かやってくれそうだと思っていたが、1曲目の“Air”からオーディエンスをスリリングに
煽動。そのままアグレッシヴなエモーションでステージ上を大胆不敵に駆け抜けていった。ジャン
ルレスなこの日のラインナップでも、彼らは特に異端。タイトかつ躍動感に溢れたプレイでバンドの
屋台骨を支える荻原朋学(ds)。本能のままに4本の弦をかき鳴らし、頭のネジがぶっ飛んだかの
ような白水悠(b)。暗闇を切り裂き、快く神経を逆なでしていく佐々木“Ruppa”瑠(sax)。そしてそんな
3人の隙間を縫い、さらには強引にこじ開けて不協和音を引き起こそうとする菊池智恵子(piano)。
それぞれが自己主張すると同時に駆け引きをして、バンド・ダイナミズムへと昇華。暗闇の中で得体
の知れないモンスターが暴れまわっているような感もあり、場内をカオスな高揚感が包んだ。
「ちょっと(演奏を)巻き過ぎた。急遽曲を増やします(笑)」とは後半での白水。KAGEROの存在感を
示そうと、本人たちもかなり勢い込んでいたのだろう。最後は当日からライヴ会場限定でリリースが
はじまったシングル“ill”でダメ押し。「ありがとう」とマイクを通さず白水。ニコッとチャーミングに笑う
菊地。やった! といった表情の佐々木。4人がステージを去った後には、濃密な余韻とともに、フィー
ドバック・ノイズが耳に心地好かった。

さらにジャンルレスなスリル感は、ライブハウスとダンスフロアの壁を打ち破ったなどと評される
GARIへと引き継がれた。ちなみに、有島氏は転換DJの間、GARI待ちの女性ファンの癇に障る
ようにMETALLICAをプレイ。おいおい…(笑)。
GARIはダンサブルなエレクトロ・ビートが生み出す高揚感と、ロックが持つ肉体的なダイナミズ
ムを融合。ハイブリッドなサウンドで場内を挑発した。それこそスペース・ディスコのようと書いた
らベタだが、フロアのボルテージも生き急ぐかのように一気にアップ。混沌とした時代を映し出す
ようにフロアを刹那な熱狂が支配し、YOW-ROW(vo,programing)もナルシシスティックに観客
を煽った。
「(このイベントが)1000回目を迎える時、もし生きていたらまたいっしょにやりましょう、有島さん。
そしてみんなも1000回目を迎える時に生きていたら、またここに来てください」とYOW-ROW。
さらに「初心に還るように、12年前ぐらいGrindHouseが立ち上がった頃にやっていた曲をやりま
す。ちょっと緊張しているのはそのせい(笑)」とプレイしたのが、インディー・ダンス(?)な“No Tittle”
ナンバー。藤本直樹もウッド・ベースを弾き、メランコリックでグラマラスな世界観が時代を超えて
心をかき鳴らした。
個人的には“Hippy Hippy Shake”に全身の血液が逆流。60年代の英リヴァプール・サウンドがハ
イパーなデジタル・ロックに生まれ変わり、さらにはライヴ・パフォーマンスによってより先鋭的で攻
撃的に迫ってくるのだから、メモ書きを放り出して暴れたくなる衝動を抑えるのに必至だった。

そしてこの日のトリは、HEAD PHONES PRESIDENT。SEの“PURGE”が不可思議なムードを
演出する中、拍手に迎えられてメンバーが登場。Anza(vo)が暗闇の中で手を広げると、エモー
ショナルで劇的なHPPワールドの扉が静かに開かれる気がして、その後に展開される圧倒的な
パフォーマンスを想像すると身震いさえした。
Anza(vo)は、ヘヴィなラウド・グルーヴに合わせて髪を振り乱して拳を突き上げ、情念的な歌声
で場内を煽動。その姿は無邪気な少女の表情を見せたかと思うと、次の瞬間には暗黒世界の女
王を思わせる険しいものへと変わり、またある時は勇ましく長い髪を風になびかせ、ジャンヌ・ダル
クを彷彿させたりする(アンコールでイベントTシャツを宣伝する姿も、飾らなくて憎めないが…)。
そして各曲に刻み付けられた感情の起伏を変幻自在なヴォーカリゼーションに昇華。加えてはラ
イヴ・ダイナミズムによってビルド・アップしてスケール感の増したバンド・サウンドと相まることで、
耳馴染みのナンバーも改めて新鮮に響き、内に秘めた感情のタガを外そうと心に攻め入ってくる。
“Stand In The World”“My Name Is”“Just A Human”…スペクタクル映画を観ているかのように、
翻弄されるがままのステージが続く。バンドの推進力としてボトムを支えるBatch(アンコールでは
テクニカルなドラム・ソロも)。虚空に向けてメロディを歌い、全身でベースを弾くNarumi。そしてへ
ヴィな側面とメロディアスな側面とを巧みにギター・フレーズに込めていくHiro。もちろんANZAの
渾身のヴォーカルも、先に述べたとおり圧倒的だ。そして1+1+1+1が化学変化を起こしてのバ
ンドの佇まいは、威風堂々。「あと何曲か(で終わりだけど、それまで私たちと)繋がりましょう」とは
後半でのAnzaだが、そんな4人にオーディエンスのエモーションも熱く呼応。快い疲労感を残し、
濃密なライヴは締めくくられた。

終演後は有島氏の挨拶。このイベントに対する思いが語られ、オーディエンスをバックに出演者全
員での記念撮影も行われた。次回の“pre-GrindHouse jamboree”は、7月開催を予定していると
いう。有島氏曰く「業界も長いんでいろいろなバンドにコネがある(笑)」とのことなので、今後の出演
者にも大いに期待がかかる。


文・兒玉常利/text by Tsunetoshi Kodama
photography by Kazuto Moriyama